糖質制限は効くの?それとも「カロリー収支」がすべてなのか
結論からお伝えします。
体脂肪が減るかどうかの“最上位ルール”は カロリー収支(摂取<消費) です。ここが赤字にならない限り、糖質をどれだけ減らしても体脂肪は落ちません。

ただし、糖質制限は「食欲を抑えやすい」「血糖変動が穏やかになる」「タンパク質が増えて満腹感が続く」といった実践上のメリットがあり、赤字を作りやすく“続けやすい方法” として非常に有効です。つまり、理屈の王様はカロリー、現場のエースは糖質制限――この二つは対立ではなく“役割分担”だと考えてください。
なぜ糖質制限で体重がすっと落ちるのか
開始直後に体重がストンと落ちるのは、糖質を減らすことで 筋内グリコーゲンと結びついた水分が抜ける ためです。ここは主に水分ですので「停滞した」と焦らず、ウエスト計測や週平均体重 を指標にしましょう。継続して赤字が積み上がれば、そこからが体脂肪の番です。
ホルモン vs カロリーの誤解を解く
「インスリンが脂肪を溜めるから糖質が太る原因」という説明は半分は正しく、半分は不十分です。インスリンは脂肪の出入りを調整しますが、総摂取エネルギーが赤字なら脂肪は減る のが生理の大原則です。糖質制限はインスリン分泌や食欲の波を穏やかにし、赤字を“作り・守る”助け をしてくれます。
まずはあなたの「カロリー赤字」を設計する

- 目安の維持カロリー:
体重×30〜35kcal(活動量が少ない方は低め、多い方は高め) - 減量期の赤字幅:−300〜−500kcal/日 が目安(急ぎすぎない)
- タンパク質:体重×1.2〜1.6g/日(筋トレ日は1.6〜2.0gまで可)
- 脂質:体重×0.6〜1.0g/日 を下限目安に(ホルモン維持)
- 食物繊維:20g/日以上(満腹感と腸のため)
この枠内で糖質量を調整します。「赤字→タンパク質→脂質下限→残りを糖質」 の順で配分すると破綻しにくいです。
糖質量の設定と3つのレベル
- ゆる低糖質(130〜200g/日):
- 外食や家族の食事と両立しやすく継続向き。
- 中低糖質(80〜130g/日):
- 空腹の波が減りやすく、体脂肪を削りやすい。
- 厳しめ(50g/日未満):
- 合う人には強力だが、運動パフォーマンスや便秘、口臭に注意。
筋トレやランニングを行う場合は、運動前後に30〜60gの糖質 を集中的に入れるとパフォーマンスと回復が保てます。
食べ方の実践ガイド
- 主食は“量”を整える:
- 白米はこぶし1個(100〜150g)から。パン・麺は週の回数で管理。
- タンパク源を主役に:
- 鶏胸・卵・魚・赤身・大豆で各食20〜40gのタンパク質。
- 野菜と海藻で皿の半分:
- 食物繊維とミネラルで満腹感UP。
- 液体カロリーを避ける:
- ジュース・ラテ・甘酒は想像以上に効きます。
- アルコールは選ぶ:
- ハイボール/焼酎1杯まで。ビール・甘いサワーは控えめに。
- 調味はメリハリ:
- マヨやドレッシングは計量。減塩しすぎて食欲が暴発しないよう、塩胡椒は上手に。
1日のサンプル(中低糖質・約−400kcalの設計例)

- 朝:ギリシャヨーグルト200g+ベリー+ナッツ少量、ゆで卵1個
- 昼:鶏胸150gソテー、サラダ大盛り、玄米100g、味噌汁
- 間:プロテイン1杯 or チーズひとかけ
- 夜:サバ塩焼き or 豆腐とひき肉の麻婆(控えめ油)、野菜炒め、主食は抜くか50gまで
- 水分:水・炭酸水・お茶をこまめに
トレーニングと“見えない消費”
脂肪を落とす近道は 筋トレ週2〜3回+日常歩数8,000〜10,000 の組み合わせです。筋トレは基礎代謝の土台を守り、日常の歩きはNEAT(非運動性熱産生) を底上げします。有酸素は余力でOK。まずはエレベーターより階段、1駅歩くなど“見えない消費”を積み上げましょう。
停滞期の突破法(優先順位つき)
- 睡眠の質と量(7時間目安):寝不足は食欲ホルモンを狂わせます。
- 塩分・便通・PMSの確認:体重は水分に振られます。週平均で判断。
- 摂取の“実測”:1〜2週間だけ重さを測り直し、隠れカロリーを洗う。
- 微調整:−100kcal/日するか、歩数+2,000歩。やりすぎないのがコツ。
- 再フィード:長期の強い赤字で疲労が強い時は、1〜2日だけ炭水化物を増やし、代謝とメンタルを整える。
よくある質問
- 夜に糖質を食べると太りますか?
総量が赤字なら太りません。睡眠の質が落ちるほどのドカ食いだけ避けましょう。 - 果物はNGですか?
量を管理すればOK。運動前後のバナナやベリーは便利です。 - 人工甘味料は?
使いすぎは甘味依存を招くことも。減らす方向で“橋渡し”として活用しましょう。
健康上の注意
糖尿病治療中、腎機能に課題がある方、妊娠・授乳中の方、摂食障害の既往がある方は、必ず医師に相談 のうえで実施してください。薬剤調整が必要な場合があります。
まとめ:勝つのは「続けられる赤字」
体脂肪を落とす主役は カロリー赤字、その赤字を無理なく作り続けるための強力な手段が 糖質制限 です。大切なのは極端さではなく、生活に馴染む設計。赤字は−300〜−500kcal、タンパク質は体重×1.2〜1.6g、食物繊維20g以上、歩数8,000〜10,000――この“地味だけど折れない型”を、まずは2週間。体は必ず応えてくれます。