はじめに――年齢より「今の筋力とフォーム」です
「ダンベルは何kgから始めればいい?」。この問いに年代別の“正解”はありません。
実は、重さは年齢ではなく今の筋力・可動域・フォームで決めるのが安全かつ最短です。目安は「自分の限界を考えるとあと2回はできそう」――トレーニング指標で言うRIR=2(RPE=8)。このラインなら関節への無理を避けつつ、確実に伸びます。
年齢で決めないほうが伸びる理由
同じ40代でも、運動歴・体重・睡眠・仕事のストレスで出せる力は大きく変わります。年齢だけで重さを固定すると、強い人には軽すぎて伸びず、初心者や久しぶりの人には重すぎて痛めやすい。「正しいフォームで最後に2回余力がある」――このルールに当てはめれば、誰でも今の自分に最適化できます。
種目別の“まずは何キロから始める?”(片手あたりの目安)
文章でざっくりイメージできるように、王道の6種目の範囲を示します。あなたの体格が小柄なら下限寄り、大柄なら上限寄りから始めましょう。フォームが崩れたら重すぎです。
- ダンベルベンチプレス:
- 男性 8–16kg / 女性 4–10kg(8–12回)
- ワンハンドロー:
- 男性 10–20kg / 女性 6–12kg(8–12回)
- ショルダープレス:
- 男性 6–12kg / 女性 3–8kg(8–12回)
- ゴブレットスクワット(両手で1個持ち):
- 男性 16–28kg / 女性 10–20kg(10–15回)
- ルーマニアン・デッドリフト(両手にダンベル):
- 男性 12–20kg/手 / 女性 8–16kg/手(8–12回)
- ダンベルカール:
- 男性 6–12kg / 女性 3–8kg(10–15回)
コツ:
プレス系は下ろし「3秒」、引く系は反動を使わず体幹を固める。下半身は深さが浅くなる・骨盤が丸まるなら重すぎです。
30・40・50代の“差”は、重さより運用ルール
30代:
上の目安どおりでOK。週3〜4回。同部位のトレーニングは48〜72時間あける。
40代:
目安より10〜15%軽く開始。ウォームアップを1〜2セット増やす。月1回は軽めの週(デロード)で関節を守る。
50代:
15〜30%軽く入り、可動域とコントロール最優先。回数帯は8〜15回中心。週2〜3回で十分伸びます。違和感が出たら即中止・種目変更。
重さの決め方:失敗しない3ステップ
- 試しセット:
- 目標回数(例:10回)で3〜4回は余る軽さから。
- 本番セット:
- 2〜3セット目でRIR=2(限界まであと2回)に近づくよう微調整。
- 漸進:
- 全セットをRIR≥2で達成できたら、次回は上半身+1〜2kg/手、下半身+2〜4kg(合計)上げる。達成できなければ据え置き。
よくあるつまずきと処方箋
- 肩や肘が痛む:プレスを軽くして回数帯を10〜15回へ。下ろし3秒+ボトム1秒停止。
- 背中種目が腰に来る:体幹(腹圧)を優先。反動を使うほど重いなら即減量。
- 下半身が浅い:可動域が保てる重量まで下げ、前傾・足幅・かかと荷重を見直す。
器具が限られている場合の現実解
家に10lb(約4.5kg)と30lb(約13.6kg)しかない――よくある状況です。それでも工夫できます。
- 上半身は片手30lbを片腕ずつ使い、左右交互に行って疲労を稼ぐ。
- スローテンポ(下ろし3〜4秒、ボトム1秒停止)やトップで2秒止めで強度調整。
- 下半身はゴブレット30lbで12〜20回。物足りなければ段差ありブルガリアンスクワットや可動域拡大で難易度アップ。
週2〜3回の“安全設計”メニュー例(全年代向け)
各種目2〜3セット、上半身は8〜12回、下半身は10〜15回、休憩60〜90秒(下半身は90〜120秒)。
- A日:ゴブレットスクワット/ダンベルベンチ/ワンハンドロー
- B日:ルーマニアンDL/ショルダープレス/ダンベルカール+体幹(プランク等)
A・Bを交互に。4週に1回は総量−30%の軽め週で関節をリフレッシュ。
まとめ――“あと2回できる重さ”が最短ルート
ダンベルの重さは、年齢ではなくフォームが保てる範囲でRIR=2に合わせるのが最適解。30代は王道どおり、40代は少し控えめ+デロード、50代は可動域とコントロール重視。急がず、痛ませず、少しずつ重く――これが最も確実に強くなる近道です。
もし身長体重・器具・運動歴がわかれば、よりピンポイントな重量設定も提案できます。